Never Let Me Go2008年12月13日 20時26分40秒



カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を読んだ。氏の作品は、最初に読んだ「日の名残り」があまりにもすばらしくて、その後に読んだ「遠い山なみの光」「わたしたちが孤児だったころ」がどうも一歩足りない印象があったせいもあって、この作品はまだ読んでいなかった。
しかし最近、新装版が出たのをきっかけに旧装版を買っておくことにした(新装版のデザインがどうもね)のだった。

まあ、そのうちぼちぼち読もうか・・と思ってたのだが、読み出してやめられなくなった。近年読んだ小説の中では、間違いなく最良の作品と思える。あまりに残酷な設定が、これでは「設定のための設定」ではないかと思われる可能性もあるのだが、最後まで読めばそれが説得力を持つものだと感じられるし、何よりも圧倒的な筆力が、作品世界を完璧に自立させているように思える。翻訳も良い。

内容は全く異なるが、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を初めて読んだときと、読後感が似ている気がする。不思議だけど。ちなみに、読み終えるとなおさら、これは旧装版を買うべきだと思えます。

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